佐岸左岸先生「オールドファッションカップケーキ」

 

オールドファッションカップケーキ (H&C Comics ihr HertZシリーズ)

オールドファッションカップケーキ (H&C Comics ihr HertZシリーズ)

 

 

 

自分の言葉で描ききる人は、人の心に訴えかける、その力量も違うなと、
前作もぼんやり思ってたんです。

前作の「春と夏となっちゃんと秋と冬と僕」もとても好きです。
短め感想ですが、この時も書いたように、
BL歳時記(勝手に命名)萌えましたよ。
「4コマで👎」……なんて言ってるヤツには言わせとけばいい。
4コマって起承転結なんですよ?その上萌えられる。天国。

こちら「オールドファッションカップケーキ」は、
前作に引き続き、兎にも角にも絵が綺麗。
あと、間とか、風景や人物を捉える角度とか、
これはすごい……(語彙力)の連続アーンド連続で、
息をもつかせぬような……物語はややゆっくり進んでいくけども。
特に4話5話は、一コマ一コマが心に訴えてくるので、
心が忙しないです。

外川は、野末の仕草とか台詞に萌えると、特にイケメンと言われると、
口に手をやる癖がありますね?
わかりやすくて可愛いです。

野末氏の下のお名前は?知りたい。
目を皿にして探したけど見つけられなかった……どなたか知ってたら教えてください。
「春と夏となっちゃんと秋と冬と僕」の、シマとナツオ、漢字でどう書くのかも知りたいんですよ。
重要なことではないと思うんですけど、知りたい。

「後悔は幸福になるための糧で、人生の燃料です。」
外川には、7年前自分にこう言って元気付けてくれた人(野末)が、
どうにも人生投げてしまってるように見えたのかな?
40間近の上司。ただ何事もなく過ぎて行く毎日に埋没して欲しくない。
女の子ごっこです、アンチエイジングです、なんて耳に心地よいことを進言し、
緩急をつけながら、鎧を剥ぎ取って行く。
その過程が読んでて心地よい。

それにしても、心に留め置いて、時々思い出したい言葉です。

「後悔は幸福になるための糧で、人生の燃料です。」


↓から恐しく長いネタバレ感想。
1話から順に。
感想って言うより、なんか解説くさくなってしまった……
だれもお前に解説なんざ頼んじゃいねぇよ!って言われると思うけども。
よろしければ、どうぞ。


↓↓バレ↓↓

 

 

 

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1

野末氏のお家、平屋建て庭付き。家からして可愛い。
夏場は雑草引き抜くの面倒くさそうだけども。
後ろが林?木が沢山?っぽいけど、駅からかなり遠いんじゃ……?

前作もでしたけど、
景色や室内を、綺麗に丁寧に描き込みをされる。
それも色んな角度から。とても好き。
もうこの家見て、朝支度やら見たら、
野末の人となりをある程度推測できてしまう。すごい。
朝ご飯が美味しそう。一人暮らしでランチョンマット……
海苔が、なんか海苔用の小皿に乗ってる……旅館みたい!
……うん、洗い物が増えるからとか言って大きめの皿になんでも盛ってたら、
お洒落な暮らしは出来ないんですよ……
わかっています……

漫画なので台詞は吹き出しですが、句点で締められてるの好きです。
ただの挨拶「おはよー。」にさえ句点がある。好き。
担当さんが「そのまま」を大切にされたんだろうか?と思ったりする。

野末と外川の会話が良いです。
10も下の部下に色々見抜かれて、
更年期障害とまで言われて慌てる野末が可愛い。
会話が軽妙で、女の子ごっこを「じゃあ、やりますか。」って、
パンケーキ屋まで部下が上司をお連れする。とても自然。

7年ぐらい前?の外川リクルート時代。
野末の、この大人としての、人生の先輩としての、
細やかでジェントルな気遣い……面接を受けに来た若者に対する……
外川が懐くのも無理はない。
もしもこの時から好きだったのなら、採用通知に拳を固めたことと思います。


2

1話のパンケーキで野末のやや深い心情に触れられたのは、
外川にとって運が良かっただけかもしれない。
でも、女の子ごっこと称して”デート”の確約に至ったのは、彼の力技。

休日にパフェを食べに行く。
野末は、上司として懐いてくれてるんだろうけど、
彼の本心は?どうなんだ?ゴマすりなのか?ってかなり気にし始めてる。

他の社員達から野末さんは最近元気ですね言われて、
外川が聞き耳立てます。
野球ボールを中村?にいきなり当てて黙らせるっていう……
これはどういう心理で?外川?
たぶん、このまま会話続くと、野末さんが喋ってしまうかもって焦ったのかな?
二人だけで会いたいのに、外野に混ざって欲しくなかった?

自分、攻の嫉妬がかなり好物です。
給湯室での、
外川の「若い女の子達との食事は楽しかったですか。」かなり良いです。
それもいきなり背後を取るという。

女の子ごっこに託けて抱きしめるところ、
野末の腕をぐいと引っ張る前のコマ、外川の目が、攻めの目で!
野末の反応も可愛くて!
「もうおしまい!」って腕を引き剥がしてるコマ、
外川はこっそり匂い嗅いでませんか?首筋辺りの?
この給湯室のエピソードは、距離が縮まった感あって、すごく好き。


3

スマホのカメラ、写真撮りたいのにビデオになっちゃう……あるある。

外川の家に行くことに。
行く途中の風景や外川のアパートも丁寧に描き込まれてて、
もうずっと眺めていたい。

「ボーイズトークしましょう。」で、
えぐいボーイズトークに発展しないところが、野末の野末らしいところ。
四十路……脂ぎったアラフォー……その脂ぎった部分が無い……ノンオイル。
あってもほんの少し。
「部下のオカズ事情なんか知りたくないよ!」で終わらせようとする。
でも外川の「俺は好きな人で抜いてます。」って言葉にややダメージを受けてます。

飲み会不参加だった外川が野末の風邪を見抜いて連れ帰ったところ。
外川の「……すごく、特別な人です。」って言葉にぐるぐるする野末。
この二人にしては珍しい噛み合わない会話。
眠った(実は眠ってない)野末の首にキスして髪に触って去る外川。
野末はもう、「特別な人」の意味はわかったと思う。
でも、知らないふりをしていたいのか……


4

野末は、会社で外川が家の鍵を返す時、かなり慌ててる。
こそこそ返して欲しかったなんて言ってしまう。
ただの上司と部下なら、こそこそする必要なんてない……ですよね?
「迷惑かけたね。」ニコッ。とかで済む話。もう意識しまくり。
挙句、外川メインらしき合コン話持ってきた、
上司……で同僚なのかなこの人は?に、
「合コンなんか絶対行かせねぇからな!」バーン!
自分で自分にびっくりしてます……よね?
この時の「でもだって(外川には)好きな子が……」て心理は、どうなんですか?
好きな子=自分にはまだならないんですか?首にキスされたのに?

結局二人とも合コン参加。
ここからの流れは、今までもすごく良かったけど、
更に良くて、台詞も間も、もう全て好き。
私はPCで読んでて、PC向かう時は何かしら音楽かけてるけど、
邪魔で消した。
二人の本音が、もう本音で。
外川は、野末さんが教えてくれたことが、
今の自分を作ってるんですよみたいなこと言うし、
野末は野末で「外川だけだよ……」って。

でも、野末は、照れ臭くなってしまって帰ろうと。
外川は溢れてしまって、自制がきかなくなってしまう。
……やってしもうたな……いや、かなり良かったけども。

元剣道部、上司に詫びを入れる時は、正座。でも震えてる。
泣き顔は描かれてないけど、涙が落ちた描写。
ああ……外川……部署移動願い……出す?


5

普通の上司と部下は、毎日一緒に昼飯食ったりしない、
週末を共有したりしない、(宴席で)いつも隣に座ったりしない、
自宅を行き来したりしない……
そんな残酷な常識に、野末は打ちのめされてるように見えます。

しかし、やはりここで急展開。
もう、ここで何かあるだろ?!って思いながら読んできてるので、
雨の回想シーンからしてどきどきする。
なんとなーくエンディングは予想できるけど、
そのエンディングまで読み進めたくなくなってくる。もったいなくて。
でも、ま、抗えず読むんですけどね。

外川がすごいこと言うんですよ。
「……俺の人生の一部じゃなくて、すべてになってください。」
次のコマの野末は……なんですか?
外川の肩越しに両手がぱーになってて、すごく可愛いんですが!

二人心から想い合ってて、それがとてもよく伝わってきて、
もうほんと好き。
何回もきっと読み返す。

 


番外編

こちら番外編?え?
番外編と言うには豪華な内容だけども。

野末の家に二人して帰りつき、玄関でいきなりガッつく外川です。
このまま野末は流されるのかと思いきや、
ちょっとした餌(キス)をあげて、
大人しくしときなさいよ?主導権は俺にあんだぞ?みたいなシーン善きです。
野末氏女子社員からエッチ下手そうとか噂されてるけど、君たち間違ってるよ。
まあこれは外川だけが知り得ることなんで仕方ないですけどね。

この番外編の初めの二人(電車での)がぎこちない感じだったんですけど、
理由が判明しますね。
外川は最後まで進めたいけど、野末が拒否してるんですね。

何に対しても10才上っていう動かしようの無い”差”にがんじがらめになってて、
セックスの先に何があるのか、そこから先を暗く考えてしまう野末です。

だってその先が怖いから。何も無くて飽きられそうだから。
何となく、ただの妄想だけど、野末が独身なのが腑に落ちました。
結婚を考えるような女性が過去にいたりもしたけど、
考えすぎて踏み込めなかったのかな?
どうしてもその辺りを深く暗く考えてしまう性分なのかもしれない。

外川にとってしてみれば、そんな野末の繊細な心情は知らない。
そして添い寝するだけなんて蛇の生殺し状態なんで、
二人で朝を迎えるとかしたくないんです。
で、帰るって言ってしまう。
野末は後ろから抱きついて帰らないで!って。
可愛い四十路だな、おい。
引き留めようと動くところ、
足元しか描かれてないのに、野末の焦りが手に取るようにわかる。すごい。

野末氏も床に突っ伏して、大声で「クソッ!」とか言うんですね。新鮮。
そんな不安もがっしり全てまるっと受け止める攻。善き攻。

んん?と思った会話があって、
野末「すぐ口の中みたがるとことか。」
外川「ああ、…なるほど。…そうかもしれません。」
ってあって、その後ややあって、外川は帰るって言い出すんです。

1話でペットボトルで水飲む野末をガン見してて、
4話では、野末の口に指を突っ込む、
それも親指2本……新しいな!と思ってたんですが、
外川は口内を蹂躙したいタイプの攻でなんですね。
いや、細かすぎて伝わらないフェチかもですが……きっとそう。

てか、外川のを口に突っ込まれた野末は?え?描かれてない?
え?うそ?脳内補完?


書き下ろし

野末が「気持ちよかった。」言っててほっとしました。
外川くんよ、「”特殊の定義”の擦り合わせ」は、
急がずゆっくりしてあげて下さい。
10才上には、心身共になかなかの負担だと思うので。